なぜフルーツジュースは健康に良くないのか

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「100%ナチュラル」という言葉はオレンジジュースやアップルジュースのパッケージで安心感を与えますが、果実を透明な飲み物に加工する工程では大きな変化が生じます。食物繊維は失われ、糖分は自由な形で残ります。その結果、「健康的」とされるこの製品は、実際には喉の渇きを癒すものというより、デザートに近い存在になります。

以下では、果物が搾汁される過程でどう変化するのか、糖分が体内でどのように処理されるのか、そしてなぜフレッシュジュースさえも主な飲み物ではなく嗜好品と見なすべきなのかを詳しく解説します。

 

木から箱へ:失われる「新鮮さ」

搾汁後、工業用ジュースは巨大な嫌気性タンクで数ヶ月保管されます。酸化を防ぎ、賞味期限を1年まで延ばすために酸素が除去され、その過程で揮発性の芳香成分も失われます。そのため、瓶詰め前にメーカーは「フレーバーパック」と呼ばれる、香料会社によって収集・再構成された精油やエッセンスのブレンドを加えます。ラベルにはこれが記載されません。なぜなら、原材料はあくまでオレンジやリンゴであり、「再香料化」されたものと見なされるからです。

フレッシュジュースは加工が少ないため、不安定なビタミンをより多く含みますが、それでも食物繊維は含まれていません。微細なフィルターによって果肉が取り除かれ、ほぼ純粋な糖液だけが残ります。

スーパーマーケットのフルーツジュース

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食物繊維 vs. 遊離糖:代謝はどう変わるのか

果物そのものでは、糖分は細胞壁の中に「閉じ込められています」。私たちが噛み、繊維を消化している間に、グルコースとフルクトースはゆっくりと放出され、肝臓がそれらを処理する時間が与えられます。しかし、ジュースでは同じ糖分がすでに溶けており、わずか数分で血流に入り、肝臓へ運ばれます。必要量を超えると、フルクトースの余剰分は脂肪に変換されます。

体系的なレビューでは、子どもにおける100%ジュースの定期的な摂取は体重指数の増加と関連し、大人ではカロリーの過剰摂取が調整されない限り、体重増加が確認されています。言い換えれば、健康で活動的な人であれば、少量のジュースで問題が起きる可能性は低いですが、代謝異常や肥満傾向がある人にとっては大きなリスク要因になります。

 

糖分の量=カロリーの量

甘い飲み物、特にフルーツジュースは、非常にカロリーが高い食品のひとつです。ジュースとともに食事を摂ると、全体として摂取カロリーが大幅に増えます。

「ジュースの糖は天然、コーラの糖は添加物」という主張は、遊離糖の総量には関係ありません。12オンス(約350ml)のアップルジュースには約36gの糖が含まれ、同量のコーラには39g含まれています。違いはごくわずかです。

世界保健機関(WHO)は、遊離糖の摂取を1日の総エネルギーの10%未満、理想的には5%程度(大人でおよそ25g)に抑えることを推奨しています。ジュース1杯だけで、その「理想値」をすでに超えてしまいます。

 

ジュース過剰摂取のリスク

観察研究では、1日2杯以上のジュースを摂取する人は、適度または稀な摂取の人に比べて、出血性脳卒中のリスクが約40%高いことが示されています。

2型糖尿病に関するメタアナリシスでも同様の結論が出ています。甘い飲み物、とくにフルーツジュースは発症率の上昇と関連し、一方で果物そのものはそのリスク低下と正の相関があります。

実験室レベルの制御された研究もこれを裏付けています。ジュースを飲んだ後の急激な血糖上昇はインスリン分泌を促進し、これが繰り返されるとインスリン抵抗性と内臓脂肪の蓄積につながります。

 

ジュース1杯に意味はあるのか?

ビタミンC、葉酸、カリウム、および一部の抗酸化物質はジュースにも確かに含まれています。たとえば、フレッシュオレンジジュースは、新鮮な果物が手に入りにくいときにアスコルビン酸を補う便利な手段のひとつです。

しかし、総合的な栄養価と満腹感では、ジュースは果物そのものにはかないません。果物2〜3個分のジュースを飲んでも満腹感はほとんどなく、同量の果物をそのまま食べるのはかなり難しいでしょう。

適度な身体活動がある場合、150mlまでのジュース摂取は通常、問題を引き起こしませんが、それ以上の定期的な摂取はリスク要因になります。これは、特に子ども、糖尿病予備軍、非アルコール性脂肪肝、肥満の人にとって重要です。これらの人々はすでにグルコース耐性が低下している可能性があります。

オレンジジュースの入ったグラス

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知っておくと面白いこと

  • 最初の工業用ジュースは1869年にアメリカ人トーマス・ウェルチによって販売され、発酵しないようパスツール処理されたブドウジュースでした。
  • ヨーロッパの成人は平均して年間約20リットルのジュースを飲んでおり、これは砂糖4kg超に相当します。
  • ガラス瓶は無限にリサイクル可能ですが、多層構造のテトラパックは複雑な分別処理が必要です。パッケージを選ぶことで、健康だけでなく飲料の気候負荷にも影響を与えることになります。
  • 150mlのオレンジジュースには、約4個の小さなみかんと同じ量の遊離糖が含まれていますが、食物繊維は約8分の1しか含まれていません。
  • ブラジルでは、法律により「suco」という名称は100%の製品にしか使えず、それ以外は「néctar」と表記する義務があります。
  • 日本では「30% vegetable & fruit juice」が販売されており、これはコーラとほぼ同量の糖分を含むマーケティング製品です。
  • 2011年以降、EU指令では「fruit juice」と表示された製品には加糖や甘味料の使用が禁止されています。これらが含まれている場合、それは「ネクター」として分類されます。
  • 世界のオレンジジュース供給は1つの地域が支配しています。全体の最大75%がブラジルから供給されており、サンパウロ州で干ばつや柑橘類のグリーン病が発生すると、世界中で価格が急騰します。
  • ビタミンCは1日あたり約2%ずつ減少します。開封後のオレンジジュースは冷蔵庫に1週間置くと約12%のアスコルビン酸が失われ、2週間後には初期量の3分の2しか残りません。
  • オレンジジュースは世界で最も人気のあるジュースです。スムージーや「機能性」飲料との競争があるにもかかわらず、オレンジジュースは依然として地球上で最も消費されており、23の主要国市場でトップの味として君臨しています。

 

実践的なアドバイス

  1. ジュースは飲み物ではなく「食べ物」と考えましょう。 渇きを癒すには水か無糖のお茶を選びましょう。
  2. 小さなグラスを選びましょう。 100mlのオレンジジュースには、糖分としてオレンジ約2個分が含まれています。
  3. 食事中にジュースを飲みましょう。 虫歯や血糖値の急上昇のリスクが下がります。
  4. ジュースを水または炭酸水で1:1に薄めましょう。 糖分を減らしながら風味を保ち、ナチュラルな「ショーレ」ができます。
  5. 果肉入りのジュースを選びましょう。 食物繊維は少ないですが、完全にろ過された製品よりは多めに含まれています。
  6. 成分表示を確認しましょう。 「ネクター」「ドリンク」「カクテル」「果汁入り飲料」などの言葉は、加糖のシグナルです。
  7. ラベルをよく読みましょう。 「100%ジュース」で、「濃縮還元アップルジュース」「グルコース・フルクトースシロップ」と書かれていないものを選びましょう。
  8. ジュースは特別な時に。 1回150mlまで、週に1〜2回を目安にしましょう。
  9. ジュースを調味料として使いましょう。 マリネ、ドレッシング、ほうれん草やにんじんを加えたスムージーなどで、食物繊維を補うことができます。
  10. 1歳未満の子どもにはジュースは不要です。 母乳、ミルク、ピューレはOKですが、ジュースは必要ありません。
  11. 子どもには水か無糖のお茶を勧めましょう。 ジュースは食事の一部としてのみ与え、「移動中の飲み物」としては控えましょう。
  12. 果物は丸ごと食べましょう。 健康的な食生活の原則として、1日2個以上の果物と3種類以上の野菜を摂ることが推奨されています。
果物と野菜が入った木製バスケット

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家庭での工夫

喉の渇きを癒すには、カロリーがなく血糖バランスに影響しない純水が最適です。余分なエネルギー摂取を避けるのにも役立ちます。

果物は丸ごと食べたほうが賢明です。そうすることで、食物繊維やビタミン、そして肝臓に負担をかけないゆるやかな糖の流れを得られます。

どうしてもジュースが飲みたい場合は、自分で作り、一部の果肉を残しましょう。朝食や食事の一部として、小さなグラスで飲むのが理想です。味を残しつつ糖分を半減させたいなら、水で1:1に薄めましょう。

子どもにはジュースを「デザート」として与え、日常的な飲み物にはしないようにしましょう。ちなみに、これが工業用ジュースの本来のコンセプトでもありました。最初のパスツール処理されたブドウジュースは、1869年に薬剤師トーマス・ウェルチが開発し、教会の売店でワインの代替品(祝祭用のお菓子)として販売されていました。日常の水分補給用ではなかったのです。

 

フルーツジュースは、ビタミンの一部を含む遊離糖の濃縮液であり、保護的な食物繊維は含まれていません。不定期かつ適度な摂取であれば、美味しい食事の一部になり得ますが、主な飲み物として常飲すれば、余分なカロリー摂取と代謝リスクの上昇につながります。肝臓や心臓、膵臓の健康を守りたいなら、グラスではなく果物そのものを手に取りましょう。果物は「飲む」より「食べる」ほうが常に体に良いのです。